建設業の一般許可と特定許可の4つの違いとは?

建設業許可を取得する際には業種ごとに「一般許可」「特定許可」のどちらを取得するか選択する必要があります。

一般許可と特定許可では大きく以下4つの点で違いがあります。

  1. 対応できる工事
  2. 許可取得の要件
  3. 工事に配置するべき技術者
  4. 下請業者の保護規定

このページではそれぞれの違いについて詳しく解説します。

新たに許可を取得される方はどちらの許可が必要になるのか、

すでに許可を取得している方は工事の契約内容や技術者の配置について問題がないかどうかご確認ください。

行政書士橋本

特に大規模な土木一式工事や建築一式工事を請け負う予定の方は特定許可が必要になることが多いです。
このページを読んで一般許可と異なる点を確認してください。

目次

一般許可・特定許可で対応できる工事の違い

下請工事のみを請け負う場合には一般許可で問題ないのですが、

元請工事を請け負う場合の一部は特定許可が必要になります。

以下の2つの条件をどちらも満たす工事をおこなう場合は特定許可が必要となります。

  1. 元請工事である
  2. 1つの工事について下請業者に発注する金額の合計が税込4,000万円(建築一式工事の場合6,000万円)以上となる

この条件のうちどちらか1つでも満たさない工事のみをおこなう場合には一般許可があれば問題ありません。

令和5年1月1日より上記2の条件について
下請業者に発注する金額の合計が税込4,500万円(建築一式工事の場合7,000万円)に変更になります。

以下まぎらわしい条件について①②に該当するかどうかの観点から特定許可が必要かどうか解説します。

8,000万円の工事を元請として受注し、すべて自社で施工する場合は特定許可が必要?

不要です。

金額の大きい元請工事ですが、

すべて自社で施工するということは下請業者に発注する金額が0円となるため②の条件に該当しません。

6,000万円の電気工事を下請として受注し、さらに下請業者へ4,500万円で発注する場合は特定許可が必要?

不要です。

6,000万円の工事を下請として受注している時点で①の条件に該当しません。

9,000万円の工事を元請として受注し、下請業者のA社・B社・C社に対して
A社に1,000万円の管工事、B社に2,000万円の電気工事、C社に3,000万円のとび・土工工事を発注する場合は特定許可が必要?

必要です。

A社・B社・C社への発注金額はそれぞれ4,000万円を超えませんが、
1つの工事について下請発注金額の合計が4,000万円(令和5年1月1日以降は4,500万円)を超える場合は特定許可が必要です。
業種が異なる場合でもすべての下請発注金額を合計して計算します。

一般許可・特定許可の取得要件の違い

一般許可の取得と比べて特定許可の取得は財産的基礎の要件」「専任技術者の要件」が厳しくなります。

それぞれの要件での違いについて解説します。

財産的基礎の要件

建設業許可を取得するためには十分な資金力を持っている必要があります。

特定許可には一般許可より格段に厳しい要件が課せられています。

一般許可の場合

「500万円以上の資金調達能力があること」が条件となります。

金融機関の残高証明書や貸借対照表の純資産額で500万円以上の資金力を示します。

自治体により証明方法が異なりますのでご注意ください。

一般許可の場合、5年ごとの許可更新の際には改めて資金力について確認されません。

特定許可の場合

以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 資本金額が2,000万円以上かつ自己資本の額(純資産)が4,000万円以上あること
  2. 欠損比率(※)が20%以内であること
  3. 流動比率(※)が75%以上であること

特定許可の場合、5年ごとの更新のたびにこの条件を満たしているかどうか審査されることになります。

特定許可をもつ業者の財務が破綻してしまうと多数の下請業者への影響が出てしまうためこれだけ厳しい要件となっております。

※欠損比率について

欠損比率とは:(欠損金額/資本金)×100(%)

欠損金額とは:繰越利益剰余金のマイナス額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))

繰越利益剰余金がプラスであれば計算せずともこの要件をクリアしています。

※流動比率について

流動比率とは:(流動資産/流動負債)×100(%)

流動資産は1年以内に現金化できる資産、流動負債は1年以内に返済の必要がある負債を表します。

流動比率が低いということは1年以内に現金の不足が起きることを示します。

専任技術者の要件

建設業許可を取得する際には「専任技術者」という技術者が各営業所ごとに専任する必要があります。

専任技術者になるための要件が一般許可・特定許可で異なります。

一般許可の場合

以下のいずれかに該当する方は一般許可の専任技術者となることができます。

  1. 許可を取得する業種に関する1級または2級の国家資格者
  2. 許可を取得する業種に関する10年以上の実務経験がある
  3. 許可を取得する業種に関する学科を卒業後3~5年以上の実務経験がある

特定許可の場合

以下のいずれかに該当する方は特定許可の専任技術者となることができます。

  1. 許可を取得する業種に関する1級の国家資格者
  2. 一般許可の専任技術者となる要件に該当+4,500万円以上の元請工事に関して2年以上の指導監督的実務経験(※)がある

※指導監督的実務経験とは・・・工事現場主任や現場監督者のような立場で工事を総合的に指導監督した経験のこと

指定建設業と呼ばれる土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7業種については②の指導監督的実務経験によって専任技術者となることができません。

工事に配置すべき技術者

建設業許可業者が工事をする場合、

特定許可が必要な工事以外のすべての工事には「主任技術者

特定許可が必要な工事には「監理技術者を配置する必要があります。

特定許可業者でも下請工事など、特定許可の必要ない工事をする場合は主任技術者を配置すれば問題ありません。

主任技術者・監理技術者になるための要件

主任技術者になるための要件

一般許可の専任技術者になるための資格または学歴・実務経験の要件を満たしていれば主任技術者になることができます。

監理技術者になるための要件

監理技術者になるためには下記2点を満たしている必要があります。

  1. 特定許可の専任技術者になるための資格または実務経験の要件を満たしていること
  2. 5年以内に監理技術者講習を修了していること

下請業者の保護規定

元請業者は特定許可業者・一般許可業者に関わらず下請業者との契約について守らなければならない義務があります。

どうしても取引上元請業者の方が優位になるため法律により下請業者を保護する規定があるのです。

中でも特定許可業者についてはさらに厳しい義務が課せられます。

元請業者に課せられる義務について解説します。
 

元請業者の義務(一般許可・特定許可共通)

見積条件の提示

元請業者は下請業者に対して「工事の全体工程」「責任施工範囲」「費用負担区分」などの工事の具体的な内容を提示しなければなりません。

また、工事の予定価格を基準として適切な見積期間を設定しなければなりません。

予定価格ごとの見積期間
  • 予定価格500万円未満→1日以上
  • 予定価格500万円以上、5,000万円未満→10日以上
  • 予定価格5,000万円以上→15日以上

②書面による契約締結

請負契約は、工事に着手する前にかならず書面で行わなければなりません。

「契約書」である必要はなく、基本契約書を取り交わしていれば

  • 注文書・請書による契約
  • メールなどの電磁的記録による契約

でも問題ありません。

電磁的記録であれば収入印紙が不要であるため経費削減となりますが、

かならず個別に印刷できる状態にしておかなければなりません。

工期変更に伴う増加費用について

下請業者に責任がなく工期が変更になり工事費用が増加した場合に増加分の費用を下請業者の負担としてはいけません。

かならず契約の変更をおこないましょう。

不当に低い請負代金の禁止

元請業者が取引上優越的な地位にあることを利用して下請業者に不当に低い請負代金で工事をさせてはいけません。

もちろん契約の変更をした結果不当に低い請負代金になってもいけません。

不当に低い代金かどうかは以下の内容で判断されます。

  • 下請負人の実行予算
  • 下請負人による再下請先、資材業者等との取引状況
  • 当該地域の施工区域における同種工事の請負代金額の実例

指値発注について

元請業者は下請業者と十分な協議をせずに一方的に請負金額を決めて契約をする指値発注をおこなってはいけません。

かならず提示する額の積算根拠を明らかにし、下請負人と十分に協議の上契約をしなければなりません。

⑥不当な使用資材等の購入強制の禁止

契約の締結後に下請業者に使用資材、機械器具又はこれらの購入先を指定し、

購入させることで下請業者の利益を害してはいけません。

契約締結前に資材やその購入先を指定することは

発注者および元請業者の希望する工事をおこなうために当然のことであるため問題ありません。

指定がある場合にはかならず契約締結前に下請業者に提示し、下請業者が適切な見積をできるようにしましょう。

やり直し工事について

下請業者の責任ではないやり直し工事をおこなう場合にはかならず契約の変更を行い、適正な費用を支払う必要があります。

下請業者に責任がないにもかかわらずやり直し工事の費用を負担させてはいけません。

赤伝処理について

赤伝処理をおこなう場合には元請業者・下請業者双方の協議・合意が必要です。

また、その内容を見積条件・契約書面に明示しなければなりません。

赤伝処理とは

赤伝処理とは下記の費用を請負金額から差し引くことです。

  • 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用
  • 下請代金の支払に関して発生する諸費用(下請代金の振り込み手数料等)
  • 下請工事の施工に伴い、副次的に発生する建設廃棄物の処理費用
  • 上記以外の諸費用(駐車場代、弁当ごみ等のごみ処理費用、安全協力会費等)

⑨下請代金の支払いについて

下請代金の支払いについては下記2点に気を付けてください。

  • 正当な理由なく長期間支払いを保留してはならない
    特に元請業者が支払いを受けた場合には
    1か月以内に下請業者への支払いをしなければならない。
  • 下請代金の支払いはできる限り現金とすること
    少なくとも労務費(社会保険料の本人負担分を含む)については現金で支払うこと

⑩不利益取扱いの禁止

元請業者は下請業者が違反行為やその疑義情報について

「駆け込みホットライン」などの行政窓口に通報したことを理由として

取引停止その他不利益な取扱いをしてはいけません。

特定許可を受けた元請業者の義務

支払い留保の禁止

下請業者が目的物の引渡しの申出をおこなった日から50日以内に下請代金を支払わなければならない。

発注者から工事代金の支払いを受けていなくとも下請業者への支払いが必要であることに注意してください。

長期手形の交付禁止

下請代金の支払いに当たって一般の金融機関による手形割引を受けることが困難である手形を交付してはならない。

特に手形期間が120日を超える長期手形を交付してはいけない。

特定許可を受けた元請業者の義務である「支払い留保の禁止」「長期手形の交付禁止」は下請業者が特定許可を取得している、または資本金4,000万円以上である場合には適用されません。

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