建設業許可業者は事業年度終了後4か月以内に「決算変更届」を提出する必要があります。
具体的には以下のような内容を届出することになります。
- 一年間でどのような工事をおこなったか
→工事経歴書を提出 - 事業年度終了時の財務状況
→貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を提出 - 会社の定款や社会保険の加入人数に変更がないかどうか
→変更がある場合のみ必要書類を提出
経営事項審査にも関係する書類ですので、特に公共工事の入札に参加する業者は
事業年度終了後すぐに届出の準備をしなければなりません。
決算変更届は毎年申請が必要です。
このページを読んでいただくと
・決算変更届の必要書類
・工事経歴書の書き方
がわかります!
決算変更届を出さないことによるデメリット
決算変更届は毎年提出する必要がありますが、もし提出しなかった場合は以下のようなデメリットがあります。
- 建設業許可の更新・業種追加・般特新規の申請ができない
- 経営事項審査を受けられない
- 罰金・建設業許可取消などの罰則を受ける可能性がある
- 取引先や銀行などからの信頼を失う
- 自社の工事実績を証明できない
さまざまなデメリットがありますが、そもそも決算変更届を期限内に提出しないことは法律違反となります。
許可更新期限のギリギリに5年分をまとめて提出される方もいらっしゃるようですが、
そうなる前に行政書士に依頼することをご検討ください。
決算変更届の必要書類
決算変更届に必要な書類は以下の通りです。
- 変更届出書
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 貸借対照表
- 損益計算書・完成工事原価報告書
- 株主資本等変動計算書
- 注記表
- 附属明細表
- 事業報告書(株式会社のみ)
- 納税証明書
- 使用人数
- 建設業法施工例第3条に規定する使用人の一覧表
- 定款
- 健康保険等の加入状況
※⑪~⑭は変更があった場合のみ提出が必要です
決算変更届で提出する建設業財務諸表(必要書類の④~⑧)の数値は経営事項審査にも使われます。
よって、公共工事の入札に参加する方にとっては非常に重要な書類になります。
本ページでは②の工事経歴書の書き方について解説します。
工事経歴書の書き方
① 建設工事の種類
工事経歴書は許可を受けた業種ごとに作成する必要があります。
工事を実際には行っていない業種や、経営事項審査を受けない業種についても工事経歴書を作成する必要があります。
② 税込・税抜
基本的には税理士の方が作成した財務諸表に合わせて作成します。
ただし、経営事項審査を受ける場合は免税事業者でない限り「税抜」で作成しなければなりません。
ほとんどの業者は税抜で会計処理をしているため問題ないですが念のため顧問税理士の方に確認しておくとよいです。
③ 注文者
自社にとって直接の注文者を記載します。
建設業者の下請として工事をおこなう場合は、自社に直接注文した建設業者名を記載します。
元請として工事をおこなう場合は発注者(施主)の名を記載しますが、
個人が発注者の場合は氏名が特定されないように「A氏」などのイニシャルで記載しましょう。
④ 元請又は下請の別
自社が発注者(施主)から直接工事を受注する場合は「元請」
それ以外の場合は「下請」と記載します。
工事経歴書には自社が元請となる工事から優先的に記載します。
記載順については次項で解説します。
⑤ JVの別
JV(共同企業体)として工事をおこなった場合には「JV」と記載します。
⑥ 工事名
契約書のとおりに記載します。
③と同様に発注者(施主)が個人の場合は氏名が特定されないように「A邸2階リフォーム工事」などのイニシャルで記載しましょう。
⑦ 工事現場のある都道府県及び市区町村名
- 政令指定都市の場合は「〇〇市〇〇区」
- 政令指定都市以外の場合は「〇〇県〇〇市」や「〇〇県〇〇町〇〇村」
- 東京23区の場合は「東京都〇〇区」
番地は記載しません。
⑧ 配置技術者
各工事現場に置かれた配置技術者の氏名、主任技術者・監理技術者の別を記載します。
元請工事かつ下請業者への発注金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合6,000万円以上)の場合は「監理技術者」
それ以外の場合は「主任技術者」を配置する必要があります。
建設業許可業者でなければ技術者の配置は不要です。
⑨ 請負代金の額
千円単位で記載します。(万円単位ではないので注意)
②で選択した税込・税抜に合わせて記載しましょう。
⑩ 工期
自社が施工した工期を記載します。(工事全体の工期ではないので注意)
⑪ 小計・合計
小計はそのページの合計を記載します。
合計は最終ページのみ記載し、業種ごとのすべての工事の合計を記載します。
また、工事経歴書に記載する工事は順序が決まっています。
条件が複雑ですので次項で解説します。
工事経歴書の工事記載順
経営事項審査を受けない場合・受ける場合で記載方法が異なります。
経営事項審査を受けない場合
経営事項審査を受けない場合は直近の事業年度において実施した工事を以下の順番で記載します。
- 完成工事について元請・下請に関わらず請負金額が大きい順に記載する。
- 未完成工事について元請・下請に関わらず請負金額が大きい順に記載する。
記載する工事数については都道府県ごとに異なります。
経営事項審査を受ける場合
まずは国土交通省の資料をご確認ください。
工事経歴書には直近の事業年度で実施した工事について記載します。
また、記載すべき工事は以下の2STEPで判断します。
元請工事を請負金額が大きい順に記載します。
元請工事全体の完成工事高合計の7割分の工事について記載が完了すれば「STEP2 すべての工事の記載」に進みます。
ただし、以下の場合には対応が異なります。
①7割分の工事を記載するまでに工事高の合計が1,000億円に達した場合
→その時点で記載終了です。これ以上続けて記載する必要はありません。
②7割分の工事を記載するまでに軽微な工事(※)が10件に達した場合
→その時点で「STEP2 すべての工事に」進みます。
※軽微な工事とは請負金額が500万円以下(建築一式工事の場合1,500万円以下)の工事のことです。
STEP1で記載した工事を除くすべての工事(STEP1で記載していない元請工事を含む)を請負金額が大きい順に記載します。
STEP1で記載した工事を含むすべての工事の完成工事高合計の7割分の工事について記載が完了すれば工事経歴書は完成です。
ただし、STEP1と同様以下の場合には対応が異なります。
①7割分の工事を記載するまでに工事高の合計が1,000億円に達した場合
→その時点で工事経歴書は完成です。
②7割分の工事を記載するまでにSTEP1とあわせて軽微な工事(※)が10件に達した場合
→その時点で工事経歴書は完成です。
下請工事の軽微な工事でない工事は記載が必要です。
※軽微な工事とは請負金額が500万円以下(建築一式工事の場合1,500万円以下)の工事のことです。