経営事項審査Y点の計算方法と点数アップ対策を解説!

経営事項審査ではX1、X2、Y、Z、Wの各点数を計算し総合評定値P点が算出されます。

このページでは経営状況(Y点)の計算方法と点数アップ対策を解説します。

経営状況(Y点)は全業種に共通の点数であり、登録経営状況分析機関に「経営状況分析申請」を行うことで算出されます。

行政書士橋本

このページを読んでいただくと
経営状況(Y点)のどの項目を重点的に対策するべきかわかります!
決算日直前で対策できる項目もございますので最後までお読みください!

目次

①純支払利息比率

純支払利息比率とは、売上高に対して支払利息がどれだけあるかという指標です。

支払利息は少ないほうが良いため、値が大きいほどマイナス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が大きい項目ですので対策による効果が出やすいです。

純支払利息比率の計算方法

$$\frac{支払利息-受取利息配当金}{売上高}×100$$

  • 売上高は審査対象の年度の完成工事高と兼業事業売上高の合計です
  • 支払利息、受取利息配当金も審査対象の年度の額で計算します
  • 最小値は-0.3%、最大値は5.1%です

純支払利息比率の得点アップ対策

①借入金を返済する

固定預金の解約、資産の売却、増資などで資金を調達し借入金の返済にあてることで支払利息を減らすことができます。

②支払利息割引料を確認する

決算書において「支払利息割引料」という科目があればそのまま建設業財務諸表に書き写すのではなく、

「支払利息」「手形割引料」に分けられないかどうか確認しましょう。

手形割引料も支払利息に合算してしまうと純支払利息比率が大きくなりマイナス評価となります。

③金利の低い金融機関で借り換えを行う

銀行との交渉を行い少しでも金利が安くなるように努めましょう。

②負債回転期間

負債回転期間とは、負債の総額が何か月分の売上に相当するかという指標です。

負債はもちろん少ないほうが良いので値が大きいほどマイナス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が大きい項目ですので対策による効果が出やすいですが、資金繰りに影響が出ますので無理のない対策が必要です。

負債回転期間の計算方法

$$\frac{流動負債+固定負債}{売上高÷12}$$

  • 売上高は審査対象の年度の完成工事高と兼業事業売上高の合計です
  • 流動負債、固定負債はどちらも決算日(基準日)時点での金額です
  • 最小値は0.9、最大値は18.0です

負債回転期間の得点アップ対策

①借入金を返済する

固定預金の解約、資産の売却、増資などで資金を調達し借入金の返済にあてることで負債総額を減らすことができます。

②決算日を見直す

流動負債、固定負債は決算日時点での瞬間の金額で計算しますので、一年のうち負債の少ない時期を決算日に設定すると得点アップにつながります。

③総資本売上総利益率

総資本売上総利益率とは、総資本(負債と純資産の合計)に対してどれだけ効率よく利益が出ているかという指標です。

少ない資本に対して大きい利益が出ているほうが良いので値が大きいほどプラス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が大きい項目ですので対策による効果が出やすいです。

値が大きいほど効率の良い経営ができているということですので建設業に限らず意識される指標です。

総資本売上総利益率の計算方法

$$\frac{売上総利益}{総資本(直近2期平均)}×100$$

  • 売上総利益=(完成工事高+兼業事業売上高)-(完成工事原価+兼業事業売上原価)です
  • 総資本=負債と純資産の合計であり、直近2期の金額を平均した値です
  • 総資本の2期平均が3,000万円未満の場合は3,000万円に引き上げて計算されます
  • 最小値は6.5%、最大値は63.6%です。

総資本売上総利益率の得点アップ対策

①借入金を返済する

固定預金の解約、資産の売却、増資などで資金を調達し借入金の返済にあてることで総資本を減らすことができます。

②減価償却を行う

固定資産の減価償却を行うことで総資本を減らすことができます。

③適正な売上原価かどうか確認する

完成工事原価は材料費、労務費、外注費、経費からなります。

特に材料費、労務費について削減できる部分がないかどうか管理してください。

④売上高経常利益率

売上高経常利益率とは、売上がどれだけ効率よく利益につながっているかという指標です。

効率よく利益を出せているほうが良いため、値が大きいほどプラス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が小さい項目ですので対策による効果が出にくいです。

売上高経常利益率の計算方法

$$\frac{経常利益}{売上高}×100$$

  • 経常利益は対象の年度の損益計算書から確認します
  • 売上高は対象の年度の完成工事高と兼業事業売上高の合計です
  • 最小値は-8.5%、最大値は5.1%です

売上高経常利益率の得点アップ対策

①経常利益を上げる

この項目については短期的な対策が難しいです。

日々の経営の中で売上、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用を適正に管理する必要があります。

②特別損失に計上できる項目がないか確認する

「役員退職金」など販売費及び一般管理費に含まれている項目の中で特別損失に計上できる項目があれば振り替えることで経常利益を増やすことができます。

⑤自己資本対固定資産比率

自己資本対固定資産比率とは、固定資産をどれだけ自己資本でまかなえているかという指標です。

固定資産はすぐに現金化できず、なるべく自己資本でまかなう方が良いため、値が大きいほどプラス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が小さい項目ですので対策による効果が出にくいです。

自己資本対固定資産比率の計算方法

$$\frac{自己資本}{固定資産}×100$$

  • 自己資本とは決算日(基準日)における純資産の額です
  • 最小値は-76.5%、最大値は350.0%です

自己資本対固定資産比率の得点アップ対策

①自己資本を増やす

増資を行う、利益を積み立てるなどの方法で自己資本を増やすことで得点アップになります。

②固定資産を見直す

固定資産の中でリース化できるものがあればリース化したり、不要なものは売却したりすることで得点アップにつながります。

ただし、得点差の少ない項目ですので無理に対策する必要はないです。

⑥自己資本比率

自己資本比率とは、総資本のうち自己資本がどれだけの割合を占めるかという指標です。

自己資本は多いほうが良いため、値が大きいほどプラス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が大きい項目ですので対策による効果が出やすいです。

自己資本比率の計算方法

$$\frac{自己資本}{総資本}×100$$

  • 自己資本、総資本ともに決算日(基準日)の貸借対照表から確認します
  • 最小値は-68.6%、最大値は68.5%です

自己資本比率の得点アップ対策

①借入金を返済する

固定預金の解約、資産の売却、増資などで資金を調達し借入金の返済にあてることで総資本を減らすことができます。

②増資を行う

増資により自己資本を増やすことで得点アップにつながります。

もちろん利益を積み立てることで自己資本を増やしても得点アップになります。

⑦営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローとは、営業活動によりどれだけ現金を獲得したかという指標です。

もちろん現金は多く獲得できる方が良いため、値が大きいほどプラス評価になる指標です。

最低点と最高点の差が大きい項目ですが、大企業でないと点数を伸ばしにくい項目です。

営業キャッシュフローの計算方法

$$\frac{営業キャッシュフロー(2期平均)}{1億}$$

  • 営業キャッシュフロー=経常利益+減価償却実施額-法人税・住民税及び事業税+貸倒引当金-売上債権+仕入債務-棚卸資産+未成工事受入金で計算します
  • 最小値は-10.0億円、最大値は15.0億円です

営業キャッシュフローの得点アップ対策

①経常利益、減価償却実施額、貸倒引当金、仕入債務、未成工事受入金を増やす

相互に影響する項目もございますので一概に言えませんが、これらの項目は増えることでキャッシュフローがプラスになります。

仕入債務が増えることがプラスになるのは少し違和感がありますが、現金で仕入れせずに債務(買掛金など)で仕入れすることで現金が減らずに済んでいるという考え方になります。

②法人税・住民税及び事業税、売上債権、棚卸資産を減らす

こちらも相互に影響する項目があり一概に言えませんが、減ることでキャッシュフローがプラスになる項目です。

売上債権の額は、まだ現金が入ってきていない売上額ですのでキャッシュフローにはマイナスに作用します。

⑧利益剰余金

利益剰余金とは、今までの利益の蓄積を表す指標です。

利益の蓄積は多い方が良いため、値が大きいほどプラス評価になる指標です。

最低点と最高点の差は大きい項目ですが、短期的な対策はできません。

利益剰余金の計算方法

$$\frac{利益剰余金}{1億}$$

  • 決算日(基準日)における貸借対照表の利益剰余金により計算します
  • 最小値は-3.0億円、最大値は100.0億円です

利益剰余金の得点アップ対策

①利益を蓄積する

毎期の利益の蓄積により得点を伸ばします。

節税を意識しすぎて利益を出さないでいると得点が伸びません。

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